この記事では、「パタハラ」について解説します。
実際に法廷で争われている事例や、Twitterで話題になった内容の実例を参考にし、「パタハラ」の実情を解説していきます。
この記事は3分くらいで読むことができ…..
・パタハラの実情を知りたい人
・自分がされている事がパタハラなのか知りたい人
・自分がしている事がパタハラなのか知りたい人
の悩みを解決できます。
本来あってはならない事ですが、何事も現状を把握することは大切です。この記事を周囲と共有し、「パタハラ」についての認識を見直すきっかけにしていきましょう!
パタハラとは?
パタハラとは「パタニティ・ハラスメント」の略称になります。元々はマタハラ(マタニティー・ハラスメント)やパワハラ(パワー・ハラスメント)などから派生した言葉で、男性の育児参加が推進されだした頃から耳にするようになった、育児に積極的に参加しようとするパパに対するハラスメントとなります。
コトバンクでは…..
男性が育児参加を通じて自らの父性を発揮する権利や機会を、職場の上司や同僚などが侵害する言動におよぶことを、パタニティー・ハラスメントと呼びます。女性社員の妊娠・出産が業務に支障をきたすとして退職を促すなどの嫌がらせをすることを指すマタハラ(マタニティー・ハラスメント)に対して、パタハラは男性社員が育児休業をとったり、育児支援目的の短時間勤務やフレックス勤務を活用したりすることへの妨害、ハラスメント行為を指します。
引用元 : コトバンク | パタニティ・ハラスメント
となっていますね。説明が不要な方は「実例」から確認して下さい!
定義
厚生労働省のホームページには「パタハラ」限定の項目は無く、「妊娠・出産・育児休業等ハラスメント」と一括りで説明されています。また、具体的にどの様な行為が該当するかは記載されていませんでした。
厚生労働省では…..
「職場」において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業、介護休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業・介護休業等を申出・取得した「男女労働者」の就業環境が害されることをいいます。
厚生労働省 | あかるい職場応援団運営事務局_ハラスメントの定義
と、なっていますがよく分かりませんよね。重要なポイントは「就業環境が害されること」になります。具体的には「働く人が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、自分の能力を発揮するのに悪影響が生じる等の見過ごすことのできない程度の支障が出ること」になります。
曖昧な解説となり申し訳ないです。これには理由があり、人それぞれ度合いが違う為になります。妊娠中の女性を例に挙げると、朝のあいさつの後に「お腹出てきたね!」と言われたと想定すると、親しい同僚からだと日常のコミュニケーションになるが上司や苦手意識のある人の場合、マタハラだと感じる場合があります。同じ言葉でも誰にどのようなシチュエーションで言われるかで受け取り方が変わってしまいます。
当該者によって何が「ハラスメント」に当たるかが違うことを覚えておきましょう!
違法性・罰則
パタハラやマタハラの具体的な定義はありませんが、妊娠・出産・育児に関する休暇や休業を理由とする解雇や不当な扱いは原則違法になります。具体的には下記の様な内容が該当します。
- 解雇
- 降格
- 減給
- 雇い留め
- 雇用形態を強要(正社員→派遣社員等)
- 退職勧告
「男女雇用機会均等法」や「育児介護休業法」により労働者は保護されています。上記の内容に少しでも該当すると思った場合は、労働局や弁護士に相談しましょう。いきなり弁護士はハードルが高いと思いますので厚生労働省が行っている事業の「労働条件相談ほっとライン」に相談するのがいいでしょう。
労働条件相談ほっとライン
実例
4つの実例を確認していきましょう。最初の2つはTwitter上での内容となり、後の2つは実際に裁判に発展した内容です。「パタハラ」ではないかと、裁判なった事例はたくさんあります。詳しく知りたい方は「厚生労働省_あかるい職場応援団_裁判例を見てみよう」を確認してみてくださいね。
1例ずつ確認していきましょう。
「カガクでネガイをカナエル会社」で・・・・・
事の発端は「夫が育休から復帰後2日で、関西への転勤辞令が出た。引っ越したばかりで子どもは来月入園。何もかもありえない。不当すぎるーー」とのツイートから始まりました。
40代の共働き夫婦は、1月に生まれた長女の為に育児休暇をそれぞれ取得し、夫は4月22日に職場復帰しました。また、住宅を購入しており、4月中旬に引っ越したばかりでした。関西への転勤は、復帰後2日目に上司に呼ばれ命じられました。「会社に所属している以上、転勤はしょうがないが今のタイミングは難しいので1~2ヶ月延ばしてもらえないか?」と会社側に相談したがそれを却下された。また、責任感の強い人であり、「今のプロジェクトが軌道に乗るまでは」との相談もしたが、却下され辞めるなら5月末だと言われ、泣く泣く5月31日付けで退職した。次への準備の時間を作る為にと20日以上あった有給休暇を申請したがそれも却下されていた。
夫の退職後に妻がこれまでの経緯を加えたうえで「#カガクでネガイをカナエル会社」を付けツイートした。すると、妻の投稿から科学メーカーのカネカだと判明し、すぐに拡散され下記の様な反応がTwitter上に多く上がった。
- 有給のこと。やめるなら他の方のためにも労基へ。ぜひ
- カネカ「カガクでネガイをカナエル会社」は社員の願いは叶えない
- こういうことが少子化につながっているということを、国会議員に伝えなくてはね。
2021年10月現在_このツイートから3年経っているが、未だに「#カガクでネガイをカナエル会社」と聞くと、あの「ハラスメント」があった会社だと認識している人も多くいます。会社側は「そのような話題は知っているが・・・・・」と曖昧な回答をし、裁判もしていない為、事の真相はハッキリ分かっていません。
ただ、カネカが法的措置を取らなかったことを考えると、表沙汰にしたく事があったからだと想像できますね。転勤については専門家も「違法性は無い」と認識が一致してします。ただ、Twitter上で炎上したことで、この内容が「パタハラ」に当たると認識している人が多いことがわかりました。違法性はなくともカネカとしてはマイナスイメージを植え付ける事例となりました。
その後の話だが、カネカは少子化対策に取り組むべく「くるみん(「次世代育成支援対策推進法」認定マーク)」を2009年に取得しています。会社の内部事情はわかりませんが、同じことが起きないように対策してもらいたいですね。
とあるTwitterで・・・・・
Twitter上には「パタハラ」を受けていると思われるユーザーが多く存在します。Twitter上の内容の為、事実に基づいているのかは分かりませんがこのような可能性があると、認識しておきましょう。
氷山の一角を紹介しました。Twitterを徘徊すると「パタハラ」等の「ハラスメント被害」に悩んでいる方が沢山いることがわかりました。会社側と労働者の些細な食い違いの様な内容から、明らかにアウトな内容まで様々です。紹介したツイートはほんの一握りとなるのでもっと見たい方は「こちら」から確認して下さい。
とある病院で・・・・・
京都にある病院で男性が3ヶ月間の育児休業の取得を理由に能力給の昇給が認められず、昇給試験も受けられなかった事例があります。これは男性側が病院側を相手とし裁判をしています。結果として、病院側の対応が違法だとされ慰謝料として15万円の支払いが命じられました。
男性側が京都の労働局に相談し、労働局から病院に是正勧告を行いましたが病院側が応じなかった為、裁判へと発展しました。判決は育児休業の取得を理由に「能力給の昇給を認めなかったこと」と「昇級試験を受けさせなかったこと」は違法だとし、損害賠償の支払いを命じました。
この判決では上記2つの内容が「育児休業を取得する社員に経済的不利益を与え、取得を抑制するものであり、公序に反しており無効」としています。育児休業を理由とし、昇給が認められないことは違法だとハッキリした事例となりました。
とある証券会社で・・・・・
証券会社に勤務する外国人男性が損害賠償等を求めて裁判をおこした事例があります。理由は、育児休業取得後に職場復帰したが仕事を与えられないなどのハラスメントを受けたと認識したからです。また、男性は状況を人事や上司に相談しても改善せず、うつ病を発症していました。
その後、会社は「求職命令」を出しました。会社の説明では「安全配慮義務」であり、復帰後に仕事を与えなかったのは「子育て中であることを配慮した結果」とコメントを出しています。
この男性の場合、育児休業を取得する前から会社側とひと悶着ありました。妻の出産に合わせて育児休業を申請しましたが母子手帳を持っていない事を理由とし最初は認められませんでした。その後、会社側は父子関係を証明する為にDNA鑑定書などの提出を求め、男性が提出したことで育児休業の取得を認めました。
裁判で男性は「TV会議や定例ミーティングに呼ばれなくなった」や育休後に海外出張が無くなり「上司から一度も出張の指示を受けなかった」などと主張していましたが会社側は否定していました。判決では「育児休業を理由として、業務から外した事実は無い」とし、損害賠償等は認められないとなりました。
理由は、男性の育児休業取得後に「これから3カ月間はできるだけ赤ちゃんの面倒を見てあげるべきだ」と上司からのメールがあったり別の上司が「会議への出席は任意だ」との証言があった為です。また、海外出張についても最初の1回を除き、「出張する人自らが、企画し部長の承認を経て行っており、指示されるものではない」と、意図的に外した訳ではないとの会社側の主張を認めました。
パタハラを受けたと認識している当該者からすると納得のできない判決となりました。最初に説明しましたが、「当該者によって、何がハラスメントに当たるかが違う」というのが分かった判決となりました。
まとめ
最後まで読んで頂き有難う御座います。「ハラスメント」全体に言える事ですが、当事者によって受け取り方違う為、何がハラスメントにあたるかの判断は非常に難しいです。信頼関係を築けている人同士であれば許される発言もありますが、全員とそのような関係になる事とは現実的ではない為、常に言葉を選ぶ必要がありますね。
日本の育児休業の制度は世界1と言われています。ただ、男性の育休取得率や会社等の周りの意識はそれに伴っていません。日本も男性の育児参加が当たり前に出来るようになるといいですね。
この記事がみなさんの生活に少しでも役立てば幸いです。